識別ノート-01
カモメ類の基本種

 ■小型カモメの比較  -ユリカモメとズグロカモメ-

左2羽がズグロカモメ、右2羽がユリカモメ

まずは一番身近な存在のユリカモメを含む小型カモメから。
小型カモメのユリカモメと、ズグロカモメは脚が赤い事と、春先の夏羽(繁殖時の羽衣。生殖羽)時には頭が頭巾をかぶったように黒くなるという共通点があります。
サイズ的にはユリカモメが一回り大きいので、並ぶとズグロカモメの小ささが際だちます。
嘴はユリカモメが赤く、ズグロカモメは黒いのですが、夏羽になるとユリカモメの嘴も黒みを帯びますので、光の具合で黒く見える時があります。しかしユリカモメの嘴に比べて、ズグロカモメはあきらかに短く半分ほどしかありません。
目の色は両者とも黒く、背の色も変わりませんが、両者は翼の先端の初列風切のパターンが違います。

上がユリカモメ、下がズグロカモメ

上がユリカモメ、下がズグロカモメ

カモメ類が翼を畳んでいると尾の方に黒く見える羽、あれが初列風切です(静止時、尾は隠れて見えない事が多い)。
ユリカモメの黒い初列風切の先端にも白斑がありますが、ほとんどが黒く見えます。それに対してズグロカモメは白い分の方が多く、あきらかに違って見えます。
小型カモメが寝ていて、嘴が見えない場合にはこの初列風切のパターンでの識別が有効です。
さて以上は成鳥での識別でしたが、幼鳥〜若鳥はどうかというと、両者とも2年目で成鳥になるので、幼羽、第一回冬羽、第一回夏羽、第二回冬羽と羽衣があります。
どちらも、茶色系統の幼羽から、徐々に灰色の成鳥羽が生えてきます。

第一回冬羽では灰色の中に茶色の羽が混じる程度です。第二回冬羽では成鳥との区別はつきにくくなります。
ここでも有効なのが嘴です。ユリカモメは幼羽では嘴の根元が黄色く、先が黒いのですが、第2回冬羽で黄色が濃くなり橙色になります。それに対してズグロカモメは黒いままです。

ユリカモメ第一回冬羽

オオズグロカモメ第一回冬羽

次に食性による見られる場所の違いがあります。
ズグロカモメは、ヤマトオサガニ等の干潟に棲息する小型のカニを主に食べるため、カニの棲息しないような、公園の池や、河川などの環境では見られる事は稀です。また、干潟が満ち潮で隠れてしまった場合にも、内陸に入らず、海上で休む事が多いようです。
このズグロカモメは福岡などではよく見られますが、北部九州以外では少ないので、一般的には小型カモメならユリカモメと考えて良いかも知れません。

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