識別ノート-04
アビ類冬羽の識別

初めてオオハム、シロエリオオハムの両者を間近に観察することが出来ました。
アビを含めて、日本近海で冬季に普通に見ることが出来る、アビ類3種の冬羽の識別に関して、少しまとめてみたいと思います。
一般的にアビ類の冬羽は姿が似ていて、尚かつ換羽のために湖沼や入り江などに入る他は、海上でしか見ることが出来ないので、遠くからの観察となり、識別が難しいと思われます。
図鑑等を見ても「フィールドガイド日本の野鳥」では、オオハムとシロエリオオハムは「冬羽ではほとんど見分けられない」とあります。
今までにもオオハムかシロエリオオハムかで何度か悩んだことがあり、きちんと整理しないといけないなと思っていました。

 ■アビ類について

アビ類は北極園の淡水の湖沼で繁殖し、冬季は南下する、潜水する大型の水鳥のグループです。潜水することに特化した体のつくりで、足は後方についており、水かきがあります。全世界で5種しかなく、その全てが日本でも観察されています。ただしハシジロアビとハシグロアビは観察されることが少なく、また、その嘴が観察出来れば識別は楽ではないかと思われます(実際に見たことがありませんのであくまで推測です)。
ということで、ここではアビ、オオハム、シロエリオオハムの3種の冬羽の識別を行います。

 ■識別点のまとめ

3種の冬羽の識別点を図鑑などで調べてまとめてみました。
3種とも冬羽は全体が黒っぽく、喉から前頸、腹まで白く、頸が長いという共通点があります。
図鑑によると、一般的にはアビ<シロエリオオハム<オオハムの順で大きいようですが、オーバーラップしている部分があるので、大きさだけでは特定出来そうにありません。
下記の比較表のうち、赤字の部分がよく識別に使われるポイントです。

体長
上面

アビ

63cm(53〜69cm)

暗灰色で、上に反って見える。

額から後頸は灰褐色で、上面は黒褐色で、羽縁が白い。

オオハム

72cm(58〜73cm)

鉛色で先端が黒い。真っ直ぐでやや太め。

額から後頸、上面まで黒褐色で、水面に浮いている時は脇の後方に白斑がある。

シロエリオオハム

65cm

鉛色で先端が黒い。真っ直ぐ尖っている。オオハムより短め。

黒い頸輪がある

額から後頸、上面まで黒褐色水面に浮いている時は脇の後方に白斑がない。

 ■頭部の比較

では嘴を中心に頭部の比較から。3種とも虹彩は赤くて、その点は比較になりません。

アビ
冬羽

嘴は細くて、上に反っているように見える。

額から後頸まで他の種と比較すると灰色ぽく見える。

目先に白い部分がある。但し幼鳥にはこの部分は白くない。

額からの灰褐色の部分が後頸しかなくて、横頸が白いため、全体的に頸が白く感じられる。但し幼羽では横頸から喉まで灰褐色の斑がある。

(幼羽から第1回夏羽へ換羽中か?)

オオハム

嘴は太くて長く見える。

頸は後頸だけではなく横頸まで黒い。

この個体は喉に薄く褐色の首輪状の斑が見える。

従って喉に黒褐色の首輪状の斑が見えたからと言って、即シロエリオオハムにはならない事が分かる。→次ページ参照

シロエリオオハム

嘴は太くて少し短く見える。

頸は後頸だけではなく横頸まで黒い。

喉にはっきりとした黒褐色の首輪状の斑がある。

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