1.はじめに

春の渡りがすんで、すっかり鳥影が薄くなった室見川で、芦に捕まって「ギョギョシ、ギョギョシ」と大きな声で鳴くオオヨシキリは、梅雨の風物詩です。室見川では4月の中旬から下旬に渡来して、秋に南方へ帰っていきます。慣れてくると五月蠅いと感じるほどの声量ですが、このオオヨシキリに変化が起きている気がします。
2005年の渡来は、それまでの4年間より1週間ほど遅くて、やきもきさせられました。夏鳥やシギチの渡りも全般的に遅かったので、あまり気にしていませんでした。渡来したら繁殖テリトリーを確保するために、例年以上とは言わないまでも、急いで賑やかに鳴くんだろうなと思っていました。ところが、どうも鳴き声が少ない気がします。もしかしたら渡来数が少ないのではと思って、調査をしてみることにしました。
2004年までは繁殖個体数の調査はしていませんでしたので、まずは今までのフィールドノートのデータをまとめることにしました。今後も毎年同様な調査を続けて、増減と原因を考えてみたいと思っています。

2.オオヨシキリについて

オオヨシキリはスズメ目ウグイス科の小鳥で、体長18cm。夏鳥として日本に渡来し、全国で繁殖する。河川等の芦原に棲息し、昆虫を主に食べる。
オスは渡来すると、すぐに繁殖の為のテリトリーを確保し、目立つソングポストで鳴く。オスの渡来から7〜10日後にメスが渡来し、オスのテリトリーを巡って、伴侶を決定する。巣は数本の芦にまたがったコップ型のものを作る。産卵期は5〜8月で、4〜6個産卵する。抱卵は12〜14日。巣立ちまでは14日程度。カッコウの託卵相手になる。

3.調査方法など

オオヨシキリは芦原などの繁殖テリトリーにソングポストを持ち、夜間も囀ることがあるように、良く鳴く鳥なので、雄の囀りを確認することで、そこにテリトリーがあることが分かります。従ってこの調査も巣自体のカウントや、実際に繁殖が成功したかどうかの調査によるものではなく、囀りによる繁殖テリトリーの数としました。
囀りの聞き取りは、繁殖していると思われる芦原の前に実際に立って行いました。鳴いていない場合でも最低3〜5分待ってみました。また、車や自転車などは移動手段として使用しましたが、移動中は聞き取りをしないことにしました。オオヨシキリの囀りは基本的に大きな音ですが、芦原に潜って鳴いている時など、結構聞き取りにくいと気があり、聞き漏らしがあると思われるからです。
一つの芦原に複数の個体が囀っている時は、同時に囀っているのを確認して、テリトリーを区別していきました。
一つのテリトリーと思われる範囲に別個体を発見した場合、その個体が囀らず、またそのテリトリーの雄個体から追い払われない場合は雌個体と判断しました。
調査は、棲息場所である芦原が途切れる橋又は堰で区切ってまとめてみました。

4.2004年度までの繁殖分布

2000年7月からの記帳しているフィールドノートから、室見川でのオオヨシキリの観察記録を、観察地点が特定出来る日を抜き出しました。
これによると、室見新橋から丸隈橋まで分布があり、「矢倉橋〜松風橋」「金武井堰〜井田尻橋」は特定出来る記録がありませんでした。しかし記録がない場合も、広範囲でフィールドノートを記載して、場所を特定していなかった為に抜けている可能性があります。鳥見を始めた頃は細かく室見川に足を運んでいましたが、最近ではこの時期はそうでもなく、また、オオヨシキリに関しても初認日しか気にしていませんでした。
また、丸隈橋〜大井出橋も記憶の中では鳴き声を聞いていた様な気がします。

場所
観察日

河口〜室見新橋

室見新橋〜小田部大橋

00.8.11,01.4.30

小田部大橋〜福重橋

00.8.16,02.4.18,02.5.8

福重橋〜橋本橋

00.7.28,00.8.3,00.8.13,00.8.17,00.8.20,01.4.18,01.4.23,02.4.18,02.5.8,
03.4.17,03.7.11,04.4.17,04.5.26,04.5.30,04.9.14

橋本橋〜外環室見橋

02.7.29,03.6.9,03.6.20,04.5.27,04.6.3,04.6.4,04.7.15

外環室見橋〜田村大橋

00.8.3,02.7.30

田村大橋〜立花堰

00.8.30,00.9.18

立花堰〜矢倉橋

01.5.15,01.5.25,01.6.16、03.6.6

矢倉橋〜松風橋

松風橋〜金武井堰

02.6.26

金武井堰〜井田尻橋

井田尻橋〜丸隈橋

00.9.10

丸隈橋〜大井出橋

大井出橋〜上流

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